長谷川健美、「フォトニクス結晶ファイバおよびホーリーファイバの研究動向」信学技報、OPE2001-106, pp. 13-18, 2001年12月14日

各種ファイバ特性

表1.実験結果と計算結果の比較


文献で報告されているファイバは空孔付加型ファイバ(Hole-assisted lightguide fiber: HALF)と呼ばれているものである。 同報告書の実験結果に対応させて計算結果を表1に示す。文献に示されている3種類のファイバの断面写真を図1に再掲する。

MDF(モードフィールド径)はホールで圧迫されていて径が小さくなる軸とホールとホールの間で径が大きくなる軸があるので計算ではそれぞれを評価した。

PFとは光パワーの中でホール部分にあるパワーと定義されて、文献では1380nmでの値が記されていたので、今回の計算でも波長を揃えて計算した。分散や実効断面積は文献とよく一致した結果となったがPFに関してはあまり良い一致とは言えない。Fiber(1)と(2)の関係はNoah-11とNoah-12の関係と一致している。Fiber(2)と(3)の関係はNoah-12とNoah-13の関係とは一致していない。ホール径が大きくなるとフィールドそのものはコアに閉じ込められ易くなり広がらないが、ホール自体も大きくなるのでそこに存在するパワーも増加する。この両者のバランスで実際のファイバ特性となっていると考えられる。



図1.文献で示されている3種類のファイバ断面

表1とも対応し、左からFiber(1), Fiber(2), Fiber(3)である。
Fiber(1)と(2)の分散や実効断面積特性がNoah-11とNoah-12の計算結果とよく一致していることは、セルマイヤーの式として用いた屈折率モデルが良好に機能していることを証明している。即ち、Fiber(1)[Noah-11]はクラッドにFドープ材料、コアはシリカであるのに対して、Fiber(2)[Noah-12]のクラッドは純粋シリカでコアはGeドープである。Fiber Designerではセルマイヤー式を標準としてテーブル入力など各種屈折率モデルを利用することができる。



フィールド分布

上記分散特性を求めた3種類の計算モデルでのフィールド分布(@1550nm)を図2〜4に記す。





分散特性の波長依存性

文献記載の分散特性を図5に再掲する。

図5.Fiber(1)〜(3)の分散特性の波長依存性

対応するFiber Designerでの計算結果を図6に記す。



図6.計算の結果得られた分散特性(Noah-11〜-13)

定量性に関しては検討の余地はあるが、全体的な傾向やファイバ間での大小関係などよく再現している。

Fiber Designerはこのようにドーパントに応じた屈折率特性を反映し、実験結果を説明することができる。実験結果と補完することにより少ない試作で所望の特性を実現するツールとして有効である。